怪談話には少し早いですが…

こんにちは。長府店の要田です。今回は僕の大好きな小説家の一人である京極夏彦さんについて書きたいと思います。どのシリーズ、どの本について書こうか改めて読み返しながら考えていたのですが何しろ超が付くほどの大作が多く(実際文庫本のサイズで1300ページオーバー、厚さが10㎝を超えるものが多数)、まとめきれない予感が多々あったので今回はこちらのご紹介です。『嗤う伊右衛門』です。京極夏彦さんといえば、妖怪のタイトルが付いた内容の本が多いのですが、今回の本と『覘き小平次』、『数えずの井戸』の3作は有名な怪談話の新解釈というか別の側面を描いた物語となっています。なかでも『嗤う伊右衛門』は1997年に執筆されたのち、2003年には監督蜷川幸雄、唐沢寿明、小雪の共演で映画化もされています。本をなかなか読む機会がない方は映画のほうを是非ごらんになってください。かなり上質なラブストーリーですよ。

今作は有名な鶴屋南北の東海道四谷怪談ではなく、その100年以上前に書かれた四谷雑談集(ぞうだんしゅう)という書まで作者が遡って原典としているらしく、そのためもともと怖がらせようと書かれていません。なので周囲に翻弄される伊右衛門とお岩の切ない愛の物語として完成していると僕は思います。善、悪は別として登場人物個々の思惑がきちんと描かれているため怪談のような、理不尽さ、不可解さがなく、人間劇としても読めると思います。

京極夏彦さんの本についてはまた書く機会もあると思いますので興味のある方はお楽しみに。

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