匣の中の失楽

こんにちわ(^^)長府店の要田です。最近読んでいるのは「匣の中の失楽」という本なんですが、久しぶりに頭の中がこんがらがる心地良さ?に酔いしれてます。

日本ミステリ作品の中で俗に三大奇書といえば「ドグラ・マグラ」「黒死館殺人事件」「虚無への供物」ですが四大奇書にするならこの「匣の中の失楽」と言われている作品です。書かれた時期が多少空いていることもあり、作者自体が影響を受けているために、前3作品、特に虚無への供物のオマージュのような仕上がりとなっている上、手法も似ているためオリジナリティとしては一線を画する評価のようです。作者の竹本健治さんは今もお元気でちょうど17日が62歳の誕生日ということです。デビュー作の匣の中の失楽以外にも探偵小説やSF小説の世界で有名な作家さんです。

内容についてですが、登場人物たちはみんな探偵小説マニアです。その中の1人が書いた小説が作中作として出てくるのですが章を追うごとに、実際の世界と作中作の中の物語が合わせ鏡のように反転しながらそれぞれに起こる殺人事件について推理を展開しながらも、徐々に論理的に理解することが困難になっていきます。このブログを書くにあたって他の方の書いたブログや感想なども調べてみたのですが全てしっくり収まる正解は未だに無いようでした。前3作品が漫画や映画、ドラマ化をされているのに対して、未だに映像化されていないのもそのあたりが理由だと考えられます。

作中作という仕組み自体が『メタフィクション』というジャンルの代表的な表現方法なのですが、本に出てくる人物自体が小説の世界を批評したり、実際に読んでいる私達の存在を知っているかのような書き方、セリフなど多くの作品には要素がある手法です。わかりやすいところで言えばいっこく堂さんの腹話術でしょうか。人形を意思を持っているかのように上手に操る一方で、人形自体が「自分は人形だから」と認識していたり、それを見ている観客の存在にも気づいていたり。ちょうど匣の中の失楽の登場人物たちも、様々な人形の名前をもじって名付けられていることに解説を読んで知りました。

メタフィクションの手法を使った面白い本を最後に2つほど紹介します。一つは東野圭吾さんの「名探偵の掟」、探偵小説のお約束、例えば謎解きのシーンでは必ず関係者全員を集めてこの中に真犯人がいます、とかですね(^^)
もう一つは作品というか作者ですが、清涼院流水さんの作品全般です。好きな作家さんなので機会があれば紹介しますね。それではまた。